蝶は鳥にはなれずとも 4 (ページ7)

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こんなことで。ページ7

『それは、事実を隠蔽するってことになるけれど…それで良いのね？』
「隠蔽…か。そうとられても、仕方無いね。誰が犯人であれ、僕は事実を伏せるべきだと思っているから。こんなことで、壊したくないんだ。だから、君達にも協力してほしい。」

こんなことで壊したくない、ね…。
私は、平田君の寄せられた眉間にそっと人差し指を当てた。
驚きで眉間の皺が無くなり、いつもの平田君の顔に戻る。

『眉間に皺なんて寄せないで、平田君。いつもの貴方らしくないよ、平田君は通常運転で笑ってて。』
「旋毛風さん…」
『そんなお顔じゃ、彼女さんの軽井沢さんだって訝しむよ。安心して、ちゃんと探すから。貴方の役に立てるなら、いくらだって協力する。』

清隆が快諾したのだ、私が断る理由は無い。
あったとしても平田君の頼みを無碍に出来る人間は、少なくともこのクラスには居ないだろう。

「…ありがとう、心強いよ。」

けれど、そう言って微笑む平田君はやはりいつもと違っていて。
クラスの安寧のために、自らの心を砕いてまで尽くす必要があるのだろうか。
彼の存在意義とは、そんなものでは無い筈なのだけれど。
妙にクラスを守ることに固執する平田君の個性が、もしかしたら彼がDクラスに落とされた所以なのかも。
深堀りはしないが、いつかその傷跡を拝見させてもらう日が来るかも知れない。
そうなった時不審がられない程度には、仲良くなっておかないとね。